背骨や骨盤の炎症による首・背中・腰の痛み、からだのこわばりなど、さまざまな症状があらわれます。
良くなったり、悪くなったりを繰り返しながら、徐々に症状が進むといわれています。
主な症状
腰の痛みは特徴的で、動いたほうが楽になる
特に腰の痛みは特徴的で、安静にしているよりも、むしろ動いたほうが痛みが軽くなります。この特徴的な腰の痛みを「炎症性腰背部痛」といいます。
痛みやこわばりは大量に作られるサイトカインが関係
体軸性脊椎関節炎とサイトカイン(イメージ図)
症状が進むとさまざまな動作が困難に
強直性脊椎炎では、両側の仙腸関節からからだの上方向に症状が進むことが多いです。
脊椎周辺、すなわち腰背部、殿部、項部、時に股関節や膝関節の疼痛、全身のこわばりや倦怠感、発熱などが主な症状で、病状が進むにつれて次第に脊椎や関節の動きが悪くなり、20~30%の症例では、脊椎が骨性に固まって動かなくなる、すなわち強直を生じることがあります(竹様脊椎bamboo spine)。まれに股関節にも強直が起こり、人工関節置換術が必要になることがあります[7]。
臨床症状や画像検査、血液検査などを参考に総合的に診断します。
腰の痛みがみられる病気は多く、ほかの病気と区別する鑑別診断を行う必要があります。
臨床症状
診断において腰や背中の痛み、からだのこわばりなどの症状の確認はとても重要です。
体軸性脊椎関節炎でみられる炎症性腰背部痛は、一般的な慢性腰痛とは特徴が異なるため、体軸性脊椎関節炎を疑うきっかけになります。
3ヵ月以上継続する腰・背中の痛みがあり、次の5項目のうち、4項目あてはまれば炎症性腰背部痛の可能性があります。
- ①40歳未満で発症
- ②発症が緩徐
- ③運動で改善
- ④安静で改善しない
- ⑤夜間の疼痛(起床で改善)
②発症が緩徐
いつ、どこで、何をしていたときに発症したのかがわかる場合は“急性”発症であり、明らかな発症日時や行為が特定できない場合(例:「夏ごろから痛くなったなぁ」)は“緩徐”な発症となります。
画像検査
X線検査やMRI検査で背骨、骨盤の状態を観察します。初期段階の骨の変化をみつけるにはMRI検査が役立ちます。
画像提供:辻 成佳 先生
血液検査
体軸性脊椎関節炎ではからだのなかで持続的な炎症が起きているため、炎症反応を評価するCRPというマーカーが増えているかを調べます。
また、体軸性脊椎関節炎と関連があるHLA-B27という遺伝子の型をもっているかどうか確認することもあります(健康保険の適用外のため主治医との相談が必要です)。
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日本脊椎関節炎学会, 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究」班, 編:脊椎関節炎診療の手引き2020, 東京, 2020, 診断と治療社.
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谷口義典:日本臨牀. 2020;78(8):1314-1319.
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Poddubnyy D, et al.:Ann Rheum Dis. 2011;70(8):1369-1374.
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Wang R, et al.:Arthritis Rheumatol. 2016;68(6):1415-1421.
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Garg N, et al.:Best Pract Res Clin Rheumatol. 2014;28(5):663-672.より改変
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Deodhar A, et al.:Ann Rheum Dis. 2016;75(5):791-794.
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難病情報センターホームページ:強直性脊椎炎(指定難病271)(https://www.nanbyou.or.jp/entry/4847[2022年9月現在])
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Sieper J, et al.:Ann Rheum Dis. 2009;68(6):784-788.